かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

思い出を整理する

少し前に中古住宅を購入しリノベーションしていましたが、それが終了し引き渡しとなりました。そうなるといよいよ、引っ越しの日程がクリアに見えてきます。さまざまな手続きに加えて、引っ越しに向けた荷物整理を進めています。

 

一度イタリアに渡った時にあらかたの物は捨ててしまい、日本に帰ってからもそれほど物は増えていません。一方でその時捨てられなかった物たちには、それなりの必要性か執着があります。今回の引っ越しでは後者を処分して、本当に必要な物だけで新生活を始めるつもりでいます。

 

執着にも色々な種類があります。単に高価だったから、とか、貰った人に義理が立たないから、という理由であれば、切り離すのは容易です。厄介なのは思い出が残っている物、しかももう取り返せない過去の出来事と紐づいた思いのある物たちです。

 

筆頭にくるのは幾つかの洋服と靴です。もう自分にとっては若すぎて、将来身につけることもないものたち。でも、それを選んでいた時の記憶はまだ鮮明です。相手に少しでも良く見られたくて、慣れない洋服屋を沢山はしごして、店員さんのコメントに半信半疑になりながらこっそりと値札を裏返しては呻吟していたあの頃が、物を見るたびに蘇ってくるのです。どれだけ頑張ってもはたから見れば大した違いは無かったはずですが、それを身につけた時に少しでも目を留めて褒めてくれたような気がするたびに心は踊りました。それでも、随分と背伸びしていた関係は長くは続きませんでした。相手からしたらむしろ始まってもいず、子供じみた遊びに付き合っていただけなのかもしれません。

 

これらを手放すことは当時の一生懸命だった自分を否定するような気がして、長いことクローゼットの奥に仕舞ったままにしていました。でも、私ももう充分大人になりました。過ぎたことはそれとして、物はただの物として、思い出はいつか消えてゆくのに任せたいと思います。

 

それでも自治体指定の『燃えるごみ』の袋にそのまま入れるのは忍びなくて、少しきれいな紙袋に包み、お別れをしました。袋に入ってしまうと、それらは随分ちっぽけで軽いものでした。ごみ袋に入れてしまっても、当然ですが私自身は何も変わりはしませんでした。

 

自治体にはごみを増やしてしまって申し訳ないですが、良いお別れができました。空いたクローゼットにまた新しい思い出を詰めてゆけたらと思います。