かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

高速バス雑記

今日から休みなので遠出をすることにして、今高速バスに乗っています。同じく今日から休みの人が多いのか道路は激しく渋滞しています。目的地までの距離は少しずつ縮まっているのに、到着までの所要時間はどんどん長くなってゆきます。

 

もうすぐ料金所なので、ほとんど動きが止まってしまいました。高級外車も業務用ワゴンも軽自動車もおしなべてじっとしているのを、高い座席から見下ろしていると何やら痛快な気がしてきます。昔の殿様は街道を行く時にこういう気分だったのかもしれません。バイクだけがすいすいと車の間を抜けてゆきます。時代劇だと、うっかり者の子供か犬か、といったところでしょうか。殿様のお付の者が無礼者と叫んで剣を振り回し、そこに颯爽と正義の味方が現れる、といった妄想が捗ります。

 

入道雲が道の行先に聳えています。そういえばあの真っ白なもくもくした形は遠くからしか見たことがありません。真下から見るとどうなっているのだろうと不思議に感じます。雲は地面から湧き上がってくるように見えその下に入る隙は無さそうですが、実際にはそんなことはないはずです。虹の足元、雨と晴れの境目など、行ってみたい場所は沢山あります。実は気付かないうちにもう何度も経験しているものもありそうですが。

 

バスのギアはずっと一速と二速を行き来しています。ギアが変わるたびに椅子が震え、窓ガラスが振動します。高速道路の継ぎ目を乗り越える小さな衝撃と合わさって、不思議と落ち着く環境です。時間と意識がゆっくり溶けていきます。

 

いつの間にか入道雲が随分近づいてきました。バスが進んだのか雲が流されてきたのか、どちらとも分かりません。このまま起きていられたら、あの雲の下に潜れるかもしれません。少しずつ暗くなり、瞼も重くなってきました。こうやって意識を手放してしまうから、雲の下の記憶がないのだと気付きました。今日もきっとそうなるのだろうな。