かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

体内を覗き込む

健康診断が好きです。体重や身長を測るシンプルなものから、血液検査や胃カメラなどの突っ込んだ内容のものまで、どれもかなり好きです。普段見られない体の内部が、数字や映像で可視化される(場合によってはライブで見られる)のが楽しいのです。年とともに受験すべき項目が増えてきますが、初めて受ける検査はいつも興味津々でワクワクします。体の持ち主がいい加減な生活をしていても体は意外ときちんと仕事をして健康を保ってくれているのに気づくと、もうすこしちゃんと気遣ってやろうと思ったりもします。

 

最近のお気に入りの検査はMRIです。同じ測定原理の分析装置を仕事でずっと使っていたので、その分析を自分自身で体験できるというのに静かに興奮します。体を台に固定されて分析装置の中に入れられる、という動きは、試料化合物を分析チューブに入れて固定して装置に入れる、という昔やっていた動きとほとんど同じです。ここでは自分が試料なのだと思うと、うっすらと感動するのです。

 

そして検査の間に聞こえる音がまたいいのです。次にどこから聞こえてくるのか予想がつかない、電子音のような響きです。この音にのって、自分の頭の中の原子がちょっとずつ整列しては戻り、を繰り返している様を想像します(実際は音とはそんなに連動していないかもしれませんが)。すると、昔見たディズニー映画の「ファンタジア」で、音楽にのってホウキが躍っていたのが連想されて、なんだか楽しい気持ちになってくるのです。

 

検査も中盤から終盤になってくると、音がどんどん激しくなっていきます。現代音楽といっても通じるのではないかという無軌道さで、色々な方向から音が入り乱れて聞こえます。機器の近くにあるコンプレッサーがずっとポンプ音を鳴らすなかで、ベースのような低音のリズムの上にドラムのようなビートが刻まれて、妙ににいい感じの音楽に聞こえることがあります。つい指先でリズムをとりたくなってしまい、検査前に技師さんに動かないようにと言われたのを思い出して必死でこらえるのです。そして、矢沢永吉の物まねで「ロックだねぇ」と言う大泉洋、などのどうでもいい想像をして時間をやり過ごします。我ながら立派な水曜どうでしょうの中毒患者だと思います。

 

そんなこんなで検査を終えて説明を聞くころには若干疲れているのですが、診察室で自分の脳の画像を見るのもまたいいものです。教科書で見た通りのものがきちんと自分の体の中に鎮座していて、いつも興味深々で見入ってしまいます。先生の説明そっちのけで脳のしわの様子を観察したりして、こんな面白いものを見られる現代に生まれてよかった、と心から思うのです。

 

 

 

 

 

 

お題「〇〇が実は大好きです!」