かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

地震に思う

さいころに、阪神淡路大震災を経験しました。経験したといっても、私の住んでいる土地ではそこまで大きな被害はなく、震源に近い地域に比べれば震度もまだ小さいほうでした。それでも、ぐっすり寝入っている明け方に起こった、急に体を持ち上げて落とすような揺れは頭に残っています。

 

まだ暗いなかで、何が起こっているのか全く分かりませんでした。家なのか家具なのかわからない何かが激しくきしんでぶつかり合っている音、蛍光灯の傘が揺れて天井にぶつかる音、台所で皿が割れて、割れた皿の上にまた何かが落ちてきて立てる音。そんな音のなか、布団の中で動くことができずに、ただこの状況がおさまるのを待っていました。布団を頭からかぶる、ということも思いつきませんでした。次に何が起こるかわからず、今起こっているのが何なのかも考える余裕はありませんでした。

 

寝ている私の頭のすぐわきに、何か重いものが落ちてきて割れた音がしました。そして、布団のそばに置いてあった縦長のカラーボックスが上下にはねているのを感じてしばらくして、揺れがとまりました。割れていたのは、自分の頭ほどの大きさのガラス瓶に紙粘土をまいて作った、手作りの花瓶でした。夏休みの自由工作で、兄弟のだれかが作ったものだったと思います。こんなに重いものが頭に当たらずにすんだ、紙粘土があったから破片も飛ばずにすんだ、と、後片付けをしながらやっと、冷静に考えることができました。ぐちゃぐちゃになった家の中は全然現実感がなく、怖いとも思えませんでした。

 

それからずっと、背の高い家具を部屋に置くことはできないでいます。高いものでも膝の高さくらいまでに決めています。台所の吊戸棚や冷蔵庫などのどうしようもないところには、できるだけ地震対策をしています。揺れ始めてからでは、思っている以上にまったく何もできないからです。

 

最近の地震のニュースには、怖くて目を背けてしまいます。災害について自分が書こうとするどんなことばも空虚に感じます。できる限りの寄付をして、少しでも助けになればと思うことしかできません。

 

お題「これまで生きてきて「死ぬかと思った」瞬間はありますか?身体的なものでも精神的なものでも」