かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

家族

だんだんと似てくるもの

小さい頃は魚肉ソーセージが嫌いでした。あの毒々しいオレンジ色のビニール包装を歯で切って開けるのも、その中のぶよっとしたピンク色の質感も、何ともつかない曖昧な味も、全部ひっくるめて苦手でした。 ところが、父親はそれが大好きで、スーパーに買い物…

シジュウカラの巣立ち

毎年、秋になるとベランダにシジュウカラ用の巣箱をかけてやります。すると冬の間に親鳥が下見に訪れて、春先に巣を作り始めます。鳥の世界は住居難だそうで、ここ数年いつも巣箱は繁殖に使われています。今年は巣箱の中にリモートカメラを設置して、巣作り…

すいぞくかんと父の思い出

ここ何回か続けて父親のことを書いているので、忘れかけていた小さな事をいくつも思い出します。そうすると、胸の中がくしゃっとしたような不思議な気分になります。 私は父が年かさになって生まれた子供だったためか、小さいころはずいぶんかわいがられまし…

父の野菜定期便

実家の父の趣味の一つは家庭菜園です。30年以上前に市民農園の一角から始めたそれは、一時期は趣味の域を越えるのではないかという規模になっていました。離農するコメ農家から棚田を借り受けて車で片道1時間以上かけて田んぼの管理に通い、シイタケ農家…

図面の裏紙

子供のころ、メモ帳といえば父親のお手製の紙束でした。父は建材工場のたたきあげ工員で、毎日作業着を着て働きに出ていました。その仕事で余った裏紙を、家のメモ帳にしていたのです。もともとB4版だった紙をB5かB6のサイズに小さく切って目玉クリップで留…

みかん水の思い出

私がまだ小さかったころ、弟が生まれました。弟は体が弱かったので、生後しばらくは母親は弟の世話にかかりきりだったようです。そのため同居していた祖母が、私を幼稚園に送り迎えしてくれていました。 幼稚園のすぐそばには古くからの駄菓子屋があり、店先…

家族と他人は何が違うのだろう

私は4人兄弟の上から2番目として育ちました。実家は狭く、自分の部屋を持つどころか全員が一つの部屋で暮らしているような状態でした。小さいころはそれでも気にならなかったのですが、全員が大きくなってくるとどんどん窮屈になり、ちょっとしたことでいが…

並んで座る二つの背中、犬のいる暮らし

小さいころは犬が大嫌いでした。隣の家で飼われていた中型犬が家の前の道路を通るたびに吠え掛かってくるので、とても怖かったのです。どれだけひっそりと気づかれないように歩いても何かをかぎつけて犬小屋から出てきて、待ち構えていたように塀から顔をぬ…