かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

利尻にて

夏の暑さに耐えかねて、色々な交通機関を乗り継いで利尻島までやってきました。今日の最高気温は18℃、半袖で歩いているのは観光客ばかりです。

 

大学生の頃、一度だけこの島に来たことがあります。その時は勢いで利尻岳に登りました。昔登っていた山よりも標高が低かったので、少し甘くみていたと思います。でも、海抜ゼロ付近からの登山は思ったよりもかなりきつく、脆い山道とあいまって山頂に着いた時にはほうほうの体でした。改めて登山ガイドを見ると、随分と無鉄砲だったことに気づいてヒヤリとしました。昔通った道は今は崩落が進み通れなくなっているそうです。

 

今回は登山はせず、麓から景色を眺めて過ごそうと思っていました。ただ、最近はあいにくのお天気が続いているようで、昨日は豪雨、今日も厚い雲に覆われて山体は見えませんでした。地元の方によると、この夏に入って山が見えたのは数日ほどだそうです。今回の滞在で晴れるかどうか、運が試されます。

 

今朝は昨夜からの雨が残っていたので、宿の部屋で雨音を聞きながら高校野球を眺めていました。時折、港に入るフェリーの汽笛や、飛行機の欠航を知らせる町の防災無線の音が耳に入ってきます。風の音、波の音も感じます。それらを聞くともなく過ごしていると、昔ながらの小さい民宿にいながらとても贅沢な時間を過ごしている気がしました。

 

昼過ぎ、雨が上がったので、原付を借りて島を廻ってみることにしました。湿気をたっぷりと含んだ空気も、この気温ではまったく不愉快ではありません。海岸線を容赦なく吹きつける風に上着が膨らみ、指先がかじかみます。ちょっとした展望台に立って周りを見渡すと、空間の広さに圧倒されます。

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北の土地独特の、白っぽい緑色の葉をした植物が風に揺れるさまを見ていると、時間がいつの間にか過ぎていきます。この厳しい気候の中で、植物は思いのほかなよなよとした風情です。道端に生える草でさえ、雑草と呼ぶには淑やかにすぎる花を咲かせています。

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北の夏に殊の外惹かれるのは、気候の過ごしやすさもさることながら、生き物の強さをより感じられるからかもしれません。動物も植物も、短い夏を逃すまいと精一杯体を広げている気がして、その姿を見ると胸をつかれるのです。