本『君たちはどう生きるか』
*この文章は、タイトルの本と、同名の映画に関する内容を含みます。
同タイトルの映画が良かったので、書籍の方の『君たちはどう生きるか』にも興味が沸きました。少し前に話題になっていた時は斜に構えて手に取りもしなかったのに、現金なものです。映画のストーリーとは全く異なる内容でしたが、こちらも読んで良かったと思える内容でした。
15才のコペル君とその叔父が日常生活の中の出来事について考えを深めていく内容で、コペル君の生活の描写と、叔父からコペル君に宛てた文章が交互に紡がれます。叔父からの言葉は、もう大人になった私にとってもはっとさせられるものでした。
『自分を中心に物事を判断していては世の中の真理を知ることはできない。』という一節があります。ある出来事に対して自分から見える事柄は一部のみで、それに対する自分の解釈や感情も正しいかどうかは分かりません。世の中一般から見たら、また、違う立場の人から見たらまるきり異なる世界があるのかもしれません。それを想像するためには、自分を取り巻く世の中や、それよりさらに広い世界を知りにゆく必要がありそうです。
また、『英雄や偉人も、歴史の大きな流れの一部に過ぎない。どんな偉業も、この流れにしっかり結びついていない限り、はかなく亡びてしまう。』とのくだりがあります。これはまさにそうで、時節に合わないことにいくら心血を注いでも世の中に役立つことはできません。歴史まで大きな時間軸といかずとも、自分の頑張りが周囲から求められているものと整合するのか、少なくとも人の役に立つことを動機とするならば気にした方が良さそうです。
一方で、『人から見て立派であることと、自分が真に立派であることは違う』ともあります。自分が何に価値を置き、それをどれだけ叶えられているのか、それを自己評価とすべきなのです。人から見て華やかな役職や経歴も、自分の価値観に合わなければ虚しいものです。一方で、自分が真に価値を感じる部分を大事にプライドを持って突き詰めることで、心からの充足を感じることができるのです。昇格の話題や業務姿勢で少し考えることがあり、この部分には勇気づけられました。
元々子供向けに書かれた本で、軽く1-2時間くらいで読める内容なのですが、思った以上に読みごたえがありました。むしろ子供の頃であれば、なんとなく大人が押し付ける道徳的な香りを感じて敬遠していたかもしれません。そう思うと、充分大人になった年齢で読んで良かったです。一方で、子供の頃に大人が薦めてくる本がおしなべてつまらなく感じた理由も、何となく分かった気がしたのでした。