かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

行きづらいけど憧れる国

イタリアに住んでいた時、借りていた部屋の内装にはどことなくアラビア風の雰囲気がありました。ベッドに唐草模様の装飾がついていたり、アラビア文字のカリグラフィーが玄関に置いてあったり、飾ってあるランプやタイルの色柄が中東めいていたり、といった具合です。簡素な家具付きアパートの部屋の中にふと現れるアラビアの雰囲気は、少し違和感はあれど心地いいものでした。

 

部屋のオーナーは中年のイタリア人夫婦で、よく会う旦那さんからはアラビアンな気配を全く感じなかったので不思議に思っていました。でも、奥さんに会って話したときに、部屋の内装の理由がとてもよく分かりました。彼女が大のイランびいきだったのです。年に1度は必ずイランに行く、という彼女からは、どれほどイランが美しくて素敵な国かをしょっちゅう聞かされました。

 

当時、私の中のイランのイメージは、世界史の教科書でかすったわずかな記憶か、核開発疑惑と経済制裁のニュースの内容くらいしかありませんでした。印象としてはどちらかといえばネガティブ寄りだったと思います。素晴らしい、という形容詞が付く国とは思っていなかったのです。

 

ただ、彼女から話を聞き、また彼女が持ってくる旅行ガイドや写真集を見るたびに、イランは私のなかでも魅力を増していきました。もともと私はイスラム建築が好きで、トルコやバルカン諸国を訪れては当地のモスクや博物館に足を運んでいたのです。なので、写真の中のイラン各地の建築物はとても素晴らしく目に映りました。特に、中世に「世界の半分がここにある」と称せられた都市、イスファハーンの美しさは圧倒的でした。モスクが好きなら絶対に行かなきゃだめよ、という彼女の言葉もあり、イランはいつしか一度は行ってみたい国になったのです。

 

ただ、イランに行くにはすこしハードルがあります。外交関係の問題で、イランへの入国履歴があるとアメリカの入国ビザが取りづらくなるのです。単に手続きが煩雑になるというだけのことなのですが、アメリカ出張が年に何度かあるのでそこで面倒になるのも避けたいのです。でも、行きづらいからこそ憧れてしまうんですよね。たまに衝動的にやってくるイラン渡航欲は、しばらくは他の人の書いた旅行記やガイドブックでなだめて過ごそうと思います。

 

お題「人生で一度でいいからいってみたい国ってどこですか?」