かもさんのひそひそ話

耳をすませば聞こえてくるよ

角打ちを楽しむ

先週末、地元の商店街で角打ちスタイルでの飲み歩き祭りが行われました。同じ市内の酒蔵が全面協賛して商店街の中の飲食店にそれぞれ1種類ずつの日本酒を提供し、飲食店側はその日本酒にあうおつまみを出す、というスタイルです。和洋中華と様々な飲食店の一品と日本酒一杯とが700円ほどで楽しめ、コロナ禍の間は休止されていた催しが久しぶりに行われたとあって、雨にもかかわらずかなりの賑わいでした。普段は入りづらい、扉の向こうが見えない個人店にも気兼ねなく入ることができ、とても楽しいイベントでした。

 

通常は座席で営業している飲食店も、この日は大量の客をさばくために立ち飲みでの営業となります。立ち飲みだと、何かあってもすぐに場を去れるせいか知らない人との交流の敷居が少し下がります。どこから来たのか、このイベントに参加するのは初めてか、ここの日本酒の中だとどれがうまい、といったその場だけの会話を気兼ねなく楽しむことができます。そして、知らない人の顔全体をこんなに間近に、しかも自分に向けた会話と表情の動き付きで見たのが久しぶりであることに気づいて、軽く驚きました。

 

ここ数年のあいだに何度も見てきた人の口から出る飛沫の映像、満員電車に乗った後に送られてくる陽性患者との接触通知、同じ会議に出ていた誰それさんが罹っていたらしいという噂、自分の行動一つが医療体制をひっ迫させるのではという恐れ、そんなあれこれがずっと、自分自身を縛っていたんだなと改めて思ったのです。

 

散りつつある桜の下をほろ酔いで歩き、はしご酒を楽しんでいる人々の口元にはもうマスクがありません。そこかしこで人の輪ができ、イベント用のおちょこを片手に盛り上がり笑っている顔を見ると、あぁどの人の顔にもちゃんと下半分があったんだなと変な安心感をおぼえました。マスク付きの顔に慣れたつもりでいたけれど、マスクのない顔に囲まれるとこんなにもほっとするのだと気づきました。

 

この数年、我が家の周りでも角打ちを自粛していた酒店が多くありました。この春くらいから、もしかしたらその営業を再開する店も増えるかもしれません。ふらっと立ち寄って酒とともに店主や知らない人との何気ない会話を楽しむ、そんな機会をこれから増やしていきたいです。

 

今週のお題「投げたいもの・打ちたいもの」